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王朝時代にアジア諸国との交易により根付き、島の風土の中で発展した琉球文化は、琉球処分、沖縄戦、戦後の米軍統治、そして日本復帰―と、幾多の荒波を越え、今に引き継がれている。「琉球歴史文化の日」(11月1日)は、その琉球文化の豊かさの再認識を目指している。伝統を守りつつ独自の感性や視点で新しい道を拓こうと挑戦する現代の担い手たちを紹介する。

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次代へ継ぐ堆錦の技法 角萬漆器(那覇市)

「私たちは伝統工芸の『編集者』」

 黒漆や朱漆に堆錦(ついきん)や螺鈿(らでん)、沈金などの技法で美しく加飾された琉球漆器。琉球王朝時代には王府直営の貝摺(かいずり)奉行所(漆器製作所)で生産され、献上品などとして海を渡り、世界的に高い評価を受けた。まさに琉球が誇る芸術品ともいえる漆器の制作技法を今に受け継ぎ、時代の風を吹き込みながら魅力を発信しているのが、創業120年余の角萬漆器(那覇市前島)だ。
 生漆を加熱して水分を蒸発させて作る「くろめ漆」と顔料を練り合わせ、餅状にしたものを薄く延ばして模様を切り抜き、器物に張り付けて彩色を施す琉球漆器特有の加飾法「堆錦」。角萬漆器では現在、かつて下地として使われた「瓦地(かわらじ)の粉(こ)」やバショウの繊維を顔料の代わりに用いる新技法「堆錦素地(仮称)」の開発に取り組んでいる。
 「私たちの仕事は、先人が培ってきたものを今のライフスタイルに合わせる作業で、言うなれば『編集』だ。堆錦技術をアップデートし、後世に残したい」。同社6代目の嘉手納豪代表(40)は力を込める。
 琉球漆器を取り巻く状況は、コロナ禍や「漆器は扱いにくい」などという誤解もあり、厳しいのが実情だ。だからこそ「琉球漆器がなかったら、沖縄の歴史と文化がなくなる」との思いを胸に、伝統を守りつつ後世にまで伝えるべく、デジタル技術なども駆使した新しい漆器を生み出すための試行錯誤を続けていく。

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漆器に漆を塗る角萬漆器の職人。最近は「たたき」という技法で滑りにくくした漆器も人気=10月12日、那覇市

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琉球漆器の木地として使われるデイゴやエゴノキを確認する嘉手納豪代表。1~5年の歳月をかけてじっくり乾燥させる

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角萬漆器の扱う色鮮やかな商品

「100年古酒」夢見て 山川酒造(本部町)

「人生の節目に『平和の酒』泡盛を」

 かつて県内に、100年や200年を超える古酒(クース)が存在していたとされる泡盛。戦禍を乗り越えて現存する物はわずかしかなく、泡盛をこよなく愛する人々にとって100年超の古酒は垂ぜんの的といえよう。山川酒造(本部町並里)は創業以来、泡盛最大の魅力である古酒造りを社業の根幹とし、「100年古酒」再生を夢見て酒造りに力を注ぎ続けている。
 同社は2007年、40年古酒「限定秘蔵酒かねやま1967」を販売。数十年物の古酒を販売する酒造所は珍しく、1本30万円と高価だったが完売した。当時社長だった山川宗克会長は(70)は「古酒の価格の付け方を誰も知らなかった。泡盛は安い酒のイメージが定着していたが、600年もの歴史を持つ世界に誇れる酒だとの思いをもって値段を決め、価値を示してきた」と振り返る。
 泡盛には、年代物の古酒に若酒を継ぎ足しながら熟成させる「仕次ぎ」という伝統的な貯蔵手法があり、同社工場内では100年物を実現するため、複数の甕(かめ)を用いた仕次ぎが継続されている。宗邦社長(61)は「戦争のない平和な時代だからこそ、100年を超える古酒が造れる。泡盛は『平和の酒』だ」と強調しつつ、「うれしい時には『祝い酒』、つらい時には『明日の糧の酒』として、人生の節目に寄り添える泡盛を造っていきたい」と力を込めた。

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泡盛を貯蔵しているタンクや甕。山川酒造では現在、工場改装を進めている

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フランスの日本酒コンクール泡盛部門で金賞を受賞した商品などを紹介する宗克会長(左)と宗邦社長=10月11日、本部町

伝統に新しい風を 新垣優香さん(読谷村)

「紅型の可能性、感じてほしい」

 ブーゲンビリアやドラゴンフルーツ、鳥、ヤギ、時計に鳥かご―。身近な動植物や生活用品を紅型にして、ラメ素材のグリッターで華やかに仕上げる。紅型作家、新垣優香さん(36)=読谷村=は、自由でみずみずしい作品が人気の若手作家だ。
 首里高校染織デザイン科を卒業、玉那覇工房などで技を磨いた。“古典”と呼ばれる伝統的な模様に魅力を感じつつも「新しいことに挑戦したい」と独立。「りゅうぎん紅型デザインコンテスト」で2年連続大賞など実績を積んだ。4年前に出産、子育てを通し、草花や虫の生命力に感動し、人との出会いに一層感謝するようになった。その経験は作品に広がりを生んだ。
 9月に沖縄市で開催した6年ぶりの個展では、万華鏡を通して見える色彩を布に印刷し、その上に紅型を施すなど自身の世界感を表現。2週間の会期に3100人余が来場した。
 伝統にとらわれない新垣さんだが、新しい挑戦をするたびに「紅型としてふさわしいか」と自問する。「紅型作家」と名乗ることに迷う時期もあった。しかし「生まれ育った沖縄の紅型、首里高で学んだことに誇りがある」と紅型作家としてのこだわりを再確認した。「今、私が表現できることを作品にしている。新しい紅型の世界を感じ、紅型の可能性に魅了されてほしい」。柔らかな笑顔に、決意をにじませた。

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家族の一員でもあるセキセイインコのシロとおしゃべりを楽しむ新垣優香さん。シロは紅型のモチーフとしてもたびたび登場する=10月19日、読谷村

琉球歴史文化の日制定を祝して
≪新たな歴史と文化の創造へ≫
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